有効質量比と参加係数 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

有効質量とは

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先生、「有効質量」(modal effective mass)って何ですか?


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有効質量は各振動モードが外部の慣性力(地震、加速度)にどの程度応答するかを示す指標だ。有効質量が大きいモードが構造の動的応答を支配する。


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全てのモードが同じように応答するわけではないんですか?


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そう。例えば片持ち梁の1次曲げモードは大きな有効質量を持つが、2次モードは1次より小さい。有効質量は各モードの「重要度」を定量化する。


数学的定義

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$i$ 番目のモードの $x$ 方向の有効質量:


$$ m_{eff,i}^x = \frac{(\{\phi_i\}^T [M] \{1_x\})^2}{\{\phi_i\}^T [M] \{\phi_i\}} $$

ここで $\{1_x\}$ は $x$ 方向の単位ベクトル(全節点の $x$ 自由度が1、他はゼロ)。


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分子はモード形状と「全体が $x$ 方向に動く」パターンの内積…モードと慣性力の「似ている度合い」ですね。


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完璧な理解だ。全体が一方向に動くモード(並進モード)は大きな有効質量を持ち、局所的なモードや回転モードは小さい有効質量を持つ。


有効質量比

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有効質量の合計は全体質量に等しい:


$$ \sum_{i=1}^{\infty} m_{eff,i}^x = M_{total} $$

各モードの有効質量比(有効質量/全体質量)で表すことが多い。


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全モードの有効質量比の合計が100%になるんですね。


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そう。実務では「有効質量比の累積が90%に達するまでのモード数」を求める。これが必要なモード数の判定基準だ。


参加係数

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「参加係数」(modal participation factor)とは?


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有効質量の分子の平方根に相当:


$$ \Gamma_i^x = \frac{\{\phi_i\}^T [M] \{1_x\}}{\{\phi_i\}^T [M] \{\phi_i\}} $$

Nastranでは PARAM,EFFMASS で有効質量を出力。AbaqusではHistory Outputの MODAL EFFECTIVE MASS で出力。


実務での使い方

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用途有効質量の使い方
地震応答解析のモード数決定各方向で90%カバーするモード数
支配的モードの特定有効質量が最大のモードが主要応答
モード重畳法の精度確認有効質量のカバー率でモード数の妥当性
質量分布の確認有効質量がゼロのモードは対称モード(非対称入力に応答しない)
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地震応答解析では「90%カバー」が基準なんですね。


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建築基準法やユーロコード8でモード重畳法の有効質量比90%が規定されている。これを満たすモード数が最低限必要なモード数だ。


まとめ

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有効質量比と参加係数を整理します。


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要点:


  • 有効質量 = モードが慣性力にどの程度応答するかの指標
  • 全モードの合計 = 全体質量 — 各モードの「重要度の比率」
  • 90%カバーが実務基準 — 必要なモード数の判定
  • 有効質量が大きいモードが支配的 — 設計で注目すべきモード
  • 方向ごとに有効質量が異なる — $x, y, z$ 各方向で別々に確認

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有効質量を見れば「どのモードが重要か」が一目でわかる。固有振動数だけでなく有効質量も見る習慣をつけます。


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固有振動数とモード形状の「次」に見るべきが有効質量だ。この3つ(振動数、モード形状、有効質量)が振動解析の3本柱。


Coffee Break よもやま話

NASAとNASTRAN — FEMの夜明け

今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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