地震応答スペクトル解析 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

応答スペクトル法とは

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先生、「応答スペクトル法」って時刻歴解析とどう違いますか?


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時刻歴解析は応答の「全時間履歴」を計算するが、応答スペクトル法は各モードの最大応答のみを求め、それを統計的に合成する。計算が桁違いに速い。


応答スペクトルの定義

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応答スペクトル $S_a(T, \zeta)$は「固有周期 $T$、減衰比 $\zeta$ の1自由度系が地震波入力を受けたときの最大加速度応答」:


$$ S_a(T, \zeta) = \max_t |\ddot{x}(t; T, \zeta)| $$

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各固有周期での最大応答を一覧にしたグラフですね。


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設計用応答スペクトルは設計コードで規定されている。建築基準法の $S_a$、ユーロコード8の弾性応答スペクトル、ASCE 7のMCERスペクトル等。


モード重畳法(RSA: Response Spectrum Analysis)

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手順:

1. 固有値解析 — $N$ 個のモード(振動数、モード形状、有効質量)

2. 各モードの最大応答 — 応答スペクトルからモード $i$ の最大加速度 $S_{a,i}$ を読み取る

3. 各モードの最大変位 — $u_{max,i} = \Gamma_i S_{d,i} \{\phi_i\}$

4. モード応答の合成 — SRSS or CQCで合成


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「各モードの最大値」は同時に発生しないから、統計的に合成するんですね。


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まさに。SRSS(二乗和平方根)は非相関のモードの合成、CQC(完全二次合成)は相関のあるモードの合成。


SRSS vs. CQC

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合成法適用
SRSS$R = \sqrt{\sum R_i^2}$モードが十分離れている場合
CQC$R = \sqrt{\sum \sum \rho_{ij} R_i R_j}$密集モードがある場合

$\rho_{ij}$ はモード相関係数(Der Kiureghian, 1981)。


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密集モードがあるならCQC一択ですね。


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現在の設計コード(ユーロコード8、ASCE 7)はCQCを推奨。SRSSは密集モードで非保守的になることがある。


まとめ

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要点:


  • 応答スペクトル = 各周期の最大応答のグラフ — 設計コードで規定
  • モード重畳法(RSA)固有値解析→スペクトル読み取り→合成
  • SRSS(非相関), CQC(相関あり) — CQCが現在の推奨
  • 時刻歴解析より桁違いに速い — 設計実務の主力
  • 有効質量90%カバーのモード数 — 建築基準法/ユーロコード8の要件

Coffee Break よもやま話

タコマナローズ橋の崩壊(1940年)

完成からわずか4ヶ月で崩壊した吊り橋。風速わずか65km/hで起きた空力弾性フラッター(共振)が原因でした。この事故は「振動解析を怠るとどうなるか」の最も有名な教訓として、今でも構造力学の教科書に載っています。現代のCAEは、この種の問題を設計段階で発見できます。もし当時にCAEがあれば、橋は今も架かっていたかもしれません。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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