オイラー・ベルヌーイ梁理論 — 理論と支配方程式
最も基本的な梁理論
先生、「オイラー・ベルヌーイ梁」って何ですか? オイラーは座屈でも出てきましたよね。
レオンハルト・オイラーとダニエル・ベルヌーイが18世紀に確立した梁の曲げ理論だ。構造力学で最も基本的な理論であり、FEMの梁要素の出発点でもある。
基本仮定
どんな仮定をしているんですか?
3つの基本仮定:
1. 平面保持の仮定 — 変形前に平面だった断面は、変形後も平面のまま
2. 直交の仮定 — 変形後も断面は梁軸(中立軸)に直交する
3. 微小変形 — 変形が十分小さい
仮定2が重要そうですね。断面が傾かないということは…
そう。せん断変形を無視するということだ。曲げだけで梁が変形し、せん断による断面の傾きはゼロ。これがオイラー・ベルヌーイ梁の最大の特徴であり、同時に最大の制約だ。
支配方程式
曲げの微分方程式を教えてください。
たわみ $w(x)$ に関する4階の常微分方程式:
ここで $EI$ は曲げ剛性、$q(x)$ は分布荷重。
4階の微分方程式! 4回積分すれば解が出る?
そう。4つの積分定数は4つの境界条件で決まる。各端で2つの条件(変位と回転、またはせん断力とモーメント)が必要だ。
各微分の物理的意味:
| 微分 | 物理量 | 式 |
|---|---|---|
| $w$ | たわみ | |
| $w' = dw/dx$ | 回転角 $\theta$ | |
| $w'' = d^2w/dx^2$ | 曲率 $\kappa = M/(EI)$ | $M = EI w''$ |
| $w''' = d^3w/dx^3$ | せん断力 | $V = -EI w'''$ |
| $w'''' = d^4w/dx^4$ | 分布荷重 | $q = EI w''''$ |
たわみを4回微分するだけで荷重に戻る。エレガントですね。
この関係を暗記しておくと、FEMの結果の検証に非常に役立つ。たわみ→回転角→曲率→モーメント→せん断力→荷重、と連鎖する。
せん断変形を無視する影響
せん断変形を無視するとどの程度の誤差が出ますか?
梁のスパン/せい比($L/h$)が大きいほど誤差が小さい:
| $L/h$ | せん断変形の寄与 | オイラー・ベルヌーイの精度 |
|---|---|---|
| > 20 | < 1% | 十分正確 |
| 10 〜 20 | 1 〜 5% | 実用上問題なし |
| 5 〜 10 | 5 〜 20% | 注意が必要 |
| < 5 | > 20% | 不正確。ティモシェンコ梁を使うべき |
$L/h < 10$ くらいから差が出始めるんですね。
一般的な鉄骨梁(H形鋼)は $L/h = 15 \sim 25$ 程度だからオイラー・ベルヌーイで十分。しかしサンドイッチパネルや短い連結梁($L/h < 5$)ではティモシェンコ梁理論が必要だ。
FEMでの梁要素
FEMのオイラー・ベルヌーイ梁要素はどんな形ですか?
2節点の梁要素で、各節点に3自由度(2Dの場合):たわみ $w$、回転角 $\theta$、軸変位 $u$。
重要な特徴は形状関数がエルミート多項式(3次多項式)であること。通常のFEM要素(ラグランジュ多項式)とは異なり、変位だけでなく回転角も節点変数にする。これにより、わずか2節点で曲げの4次の微分方程式を正確に解ける。
2節点で4次の方程式が解ける! 要素1つで正確なんですか?
一様断面・一定分布荷重の場合、1要素で厳密解が得られる。これはオイラー・ベルヌーイ梁要素の大きな利点だ。集中荷重が作用する位置には節点を置く必要があるが、それ以外は粗いメッシュで十分だ。
まとめ
オイラー・ベルヌーイ梁理論を整理します。
要点:
- せん断変形を無視した古典的梁理論 — 断面は常に中立軸に直交
- $EI w'''' = q$ — 4階の常微分方程式
- $L/h > 10$ なら十分正確 — 細長い梁に適用
- FEMではエルミート補間 — 2節点で一様梁の厳密解
- $L/h < 5$ ではティモシェンコ梁を使う — せん断変形が無視できない
構造力学の教科書で最初に学ぶ「梁の曲げ」がオイラー・ベルヌーイ理論だったんですね。改めて理解が深まりました。
材料力学の授業で解いた片持ち梁のたわみ $\delta = PL^3/(3EI)$ は、まさにこの理論の解だ。FEMの梁要素はこの理論を離散化したもので、原理は同じなんだ。
タイタニック号と安全率の教訓
「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。
各項の物理的意味
- 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
- 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
- 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
- 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 変位 $u$ | m(メートル) | mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること |
| 応力 $\sigma$ | Pa(パスカル)= N/m² | MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意 |
| 歪み $\varepsilon$ | 無次元(m/m) | 工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時) |
| 弾性率 $E$ | Pa | 鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意 |
| 密度 $\rho$ | kg/m³ | mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼) |
| 力 $F$ | N(ニュートン) | mm系ではN、m系ではNで統一 |
数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)
最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)
メッシュ密度を変えた収束性の確認:
ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。
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CAEの未来を、実務者と共に考える
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