オイラー・ベルヌーイ梁理論 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

最も基本的な梁理論

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先生、「オイラー・ベルヌーイ梁」って何ですか? オイラーは座屈でも出てきましたよね。


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レオンハルト・オイラーとダニエル・ベルヌーイが18世紀に確立した梁の曲げ理論だ。構造力学で最も基本的な理論であり、FEMの梁要素の出発点でもある。


基本仮定

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どんな仮定をしているんですか?


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3つの基本仮定


1. 平面保持の仮定 — 変形前に平面だった断面は、変形後も平面のまま

2. 直交の仮定 — 変形後も断面は梁軸(中立軸)に直交する

3. 微小変形 — 変形が十分小さい


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仮定2が重要そうですね。断面が傾かないということは…


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そう。せん断変形を無視するということだ。曲げだけで梁が変形し、せん断による断面の傾きはゼロ。これがオイラー・ベルヌーイ梁の最大の特徴であり、同時に最大の制約だ。


支配方程式

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曲げの微分方程式を教えてください。


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たわみ $w(x)$ に関する4階の常微分方程式:


$$ EI \frac{d^4 w}{dx^4} = q(x) $$

ここで $EI$ は曲げ剛性、$q(x)$ は分布荷重。


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4階の微分方程式! 4回積分すれば解が出る?


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そう。4つの積分定数は4つの境界条件で決まる。各端で2つの条件(変位と回転、またはせん断力とモーメント)が必要だ。


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各微分の物理的意味:


微分物理量
$w$たわみ
$w' = dw/dx$回転角 $\theta$
$w'' = d^2w/dx^2$曲率 $\kappa = M/(EI)$$M = EI w''$
$w''' = d^3w/dx^3$せん断力$V = -EI w'''$
$w'''' = d^4w/dx^4$分布荷重$q = EI w''''$
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たわみを4回微分するだけで荷重に戻る。エレガントですね。


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この関係を暗記しておくと、FEMの結果の検証に非常に役立つ。たわみ→回転角→曲率→モーメント→せん断力→荷重、と連鎖する。


せん断変形を無視する影響

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せん断変形を無視するとどの程度の誤差が出ますか?


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梁のスパン/せい比($L/h$)が大きいほど誤差が小さい:


$L/h$せん断変形の寄与オイラー・ベルヌーイの精度
> 20< 1%十分正確
10 〜 201 〜 5%実用上問題なし
5 〜 105 〜 20%注意が必要
< 5> 20%不正確。ティモシェンコ梁を使うべき
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$L/h < 10$ くらいから差が出始めるんですね。


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一般的な鉄骨梁(H形鋼)は $L/h = 15 \sim 25$ 程度だからオイラー・ベルヌーイで十分。しかしサンドイッチパネルや短い連結梁($L/h < 5$)ではティモシェンコ梁理論が必要だ。


FEMでの梁要素

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FEMのオイラー・ベルヌーイ梁要素はどんな形ですか?


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2節点の梁要素で、各節点に3自由度(2Dの場合):たわみ $w$、回転角 $\theta$、軸変位 $u$。


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重要な特徴は形状関数がエルミート多項式(3次多項式)であること。通常のFEM要素(ラグランジュ多項式)とは異なり、変位だけでなく回転角も節点変数にする。これにより、わずか2節点で曲げの4次の微分方程式を正確に解ける。


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2節点で4次の方程式が解ける! 要素1つで正確なんですか?


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一様断面・一定分布荷重の場合、1要素で厳密解が得られる。これはオイラー・ベルヌーイ梁要素の大きな利点だ。集中荷重が作用する位置には節点を置く必要があるが、それ以外は粗いメッシュで十分だ。


まとめ

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オイラー・ベルヌーイ梁理論を整理します。


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要点:


  • せん断変形を無視した古典的梁理論 — 断面は常に中立軸に直交
  • $EI w'''' = q$ — 4階の常微分方程式
  • $L/h > 10$ なら十分正確 — 細長い梁に適用
  • FEMではエルミート補間 — 2節点で一様梁の厳密解
  • $L/h < 5$ ではティモシェンコ梁を使う — せん断変形が無視できない

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構造力学の教科書で最初に学ぶ「梁の曲げ」がオイラー・ベルヌーイ理論だったんですね。改めて理解が深まりました。


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材料力学の授業で解いた片持ち梁のたわみ $\delta = PL^3/(3EI)$ は、まさにこの理論の解だ。FEMの梁要素はこの理論を離散化したもので、原理は同じなんだ。


Coffee Break よもやま話

タイタニック号と安全率の教訓

「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。

CAEの未来を、実務者と共に考える

Project NovaSolverは、オイラー・ベルヌーイ梁理論における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。

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