レーシングカーの空力 — 先端技術と研究動向
グラウンドエフェクト解析
2022年以降のF1で重要になったグラウンドエフェクトの解析技術を教えてください。
フロア下面のベンチュリ構造がダウンフォースの主力源になった。解析上の課題は、ライドハイト(車高)変化に対する空力特性の急激な変化だ。
- ポーパシング(Porpoising): 高速走行時にフロアが地面に接近→DF増加→車体沈下→フロアシール→急激なDF喪失→車体上昇…の自励振動
- 解析手法: 6DOF運動モデルとCFDの連成が必要。STAR-CCM+のDFBI(Dynamic Fluid Body Interaction)機能で再現可能
- メッシュ要件: フロア下面に10層以上のセル、ライドハイト10--30mmの領域を高解像度化
ポーパシングはCFDで予測できるんですか?
非定常CFD + 車両運動モデルの連成で定性的には再現できる。ただしタイヤのばね特性やダンパー特性も含めたマルチフィジックス連成が必要で、計算コストは莫大だ。
機械学習の活用
FIAのCFD使用制限があるから、少ないケース数で最大限の情報を引き出す必要があるんですよね。
その通り。ATR制限下では「どの形状を計算するか」の選択が勝負を分ける。ベイズ最適化やアクティブラーニングで次に計算すべき設計点を効率的に選ぶ手法が注目されているんだ。
DrivAer / Ahmed Bodyベンチマーク
レーシングCFDの検証に使われるベンチマーク:
| ベンチマーク | 概要 | 用途 |
|---|---|---|
| Ahmed Body | 25度/35度スラントバック鈍頭物体 | 後流構造の検証 |
| ASMO Body | 汎用自動車形状 | 抗力予測の検証 |
| DrivAer | ミュンヘン工科大の詳細車両モデル | 自動車CFDの標準ベンチマーク |
| SAE Reference Car | F-SAE向け | 学生フォーミュラ |
今後の展望
F1と空力の戦い
F1マシンは時速300kmで走ると、車重と同じくらいのダウンフォース(下向きの空力的な力)を発生します。つまり理論上、天井に貼り付けて走れる! チームは数千CPU時間のCFDシミュレーションを毎週実行し、フロントウィングの角度を0.1°単位で最適化しています。F1はCAEの技術力がそのまま順位に直結する世界です。
先端技術を直感的に理解する
この分野の進化のイメージ
CFDの最先端は「天気予報の進化」に似ている。かつての天気予報(RANS)は平均的な傾向しか分からなかったが、最新の数値天気予報(LES/DNS)は個々の雲の動きまでシミュレーションできる。AIとの融合により「数秒で近似予測」も可能になりつつある。
なぜ先端技術が必要なのか — レーシングカーの空力の場合
従来手法でレーシングカーの空力を解析すると、計算時間・精度・適用範囲に限界がある。例えば、設計パラメータを100通り試したい場合、従来手法では100回の解析が必要だが、サロゲートモデルを使えば数回の解析結果から100通りの予測が可能になる。「全部試す」から「賢く推測する」への転換が先端技術の本質。
CFDメッシュの品質管理や乱流モデルの選定に悩む時間を、もっと創造的な設計作業に使えたら。 — Project NovaSolverはそんな実務者の声から生まれました。
Project NovaSolver — CAE実務の課題に向き合う研究開発
「レーシングカーの空力をもっと効率的に解析できないか?」——私たちは実務者の声に耳を傾け、既存ワークフローの改善を目指す次世代CAEプロジェクトに取り組んでいます。具体的な機能はまだ公開前ですが、開発の進捗をお届けします。
進捗通知を受け取る →