Smagorinskyモデル -- 数値解法と実装

カテゴリ: 流体解析 | 2026-01-20
smagorinsky-model-method
数値解法の舞台裏

実装の詳細

🧑‍🎓

Smagorinskyモデルをコードに実装するとき、具体的にはどういう手順になりますか?


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各タイムステップ、各セルで以下を計算する。


1. フィルタ済み速度勾配 $\partial \bar{u}_i / \partial x_j$ を計算

2. 歪み速度テンソル $\bar{S}_{ij}$ を計算

3. $|\bar{S}| = \sqrt{2\bar{S}_{ij}\bar{S}_{ij}}$ を計算

4. フィルタ幅 $\Delta$ を計算(セル体積の立方根など)

5. SGS渦粘性 $\nu_{sgs} = (C_s \Delta)^2 |\bar{S}|$ を算出

6. 実効粘性 $\nu_{eff} = \nu + \nu_{sgs}$ として運動量方程式の拡散項に反映


SGSモデルの追加的な輸送方程式は一切不要なので、実装は非常にシンプルだ。


フィルタ幅の計算方法

🧑‍🎓

フィルタ幅 $\Delta$ の計算方法にはいくつか種類があるんですよね?


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そうだ。代表的なフィルタ幅の定義は以下の通り。


定義特徴
体積ベース$\Delta = V_{cell}^{1/3}$最も一般的、非構造格子向き
最大辺長$\Delta = \max(\Delta x, \Delta y, \Delta z)$保守的、アスペクト比大で過大
幾何平均$\Delta = (\Delta x \cdot \Delta y \cdot \Delta z)^{1/3}$構造格子で使用

アスペクト比の大きいセル(壁面近傍のプリズム層など)では、フィルタ幅の定義が結果に大きく影響するんだ。


OpenFOAMでの実装

🧑‍🎓

OpenFOAMでSmagorinskyモデルを使うにはどう設定しますか?


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constant/turbulencePropertiesに以下のように記述する。


```

simulationType LES;

LES

{

LESModel Smagorinsky;

turbulence on;

printCoeffs on;

delta cubeRootVol;

SmagorinskyCoeffs

{

Ck 0.094;

Ce 1.048;

}

}

```


OpenFOAMでは $C_s$ ではなく $C_k$ と $C_e$ で定義されていて、$C_s = C_k^{3/4}/\pi$ の関係があるよ。


Ansys Fluentでの設定

🧑‍🎓

Fluentではどうですか?


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Fluent ではViscous ModelダイアログでLESを選択し、SGSモデルとしてSmagorinsky-Lilly Modelを選ぶ。Smagorinsky定数はデフォルトで $C_s = 0.1$ が設定されていて、必要に応じて変更できる。壁面近傍のVan Driest減衰は自動的に適用されるから、特別な設定は不要だ。


数値安定性の考慮

🧑‍🎓

Smagorinskyモデルで数値的に注意することはありますか?


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Smagorinskyモデルは $\nu_{sgs} \geq 0$ が常に保証されるので、数値的には非常に安定だ。これは大きなメリットで、特に初心者がLESを始める際には安心して使える。ただし、逆に言うとエネルギーの逆カスケード(小スケールから大スケールへのエネルギー移動)を一切表現できないという物理的な制約でもある。


🧑‍🎓

安定性と物理的正確さのトレードオフがあるんですね。


🎓

その通り。実務でSmagorinskyモデルを使うときは、$C_s$ の値を慎重に選び、壁面減衰を適切に設定すれば、多くの工業的な問題で十分な精度が得られるよ。


Coffee Break よもやま話

レイノルズの実験(1883年)——乱流発見の瞬間

オズボーン・レイノルズは、管内の水にインクを流す実験で「層流から乱流への遷移」を発見しました。流速を上げていくと、インクの線がある瞬間にグチャグチャに乱れる。この劇的な瞬間を、レイノルズは数学的に $Re = \rho uD/\mu$ という無次元数で表現した。100年以上経った今も、CFDエンジニアが最初に確認するのはこのレイノルズ数です。

離散化手法の詳細解説

空間離散化における手法選択が数値精度・安定性・計算コストに与える影響を詳述する。

風上差分(Upwind)

1次風上: 数値拡散が大きいが安定。2次風上: 精度向上するが振動のリスク。高レイノルズ数流れでは必須。

中心差分(Central Differencing)

2次精度だが、Pe数 > 2で数値振動が発生。低レイノルズ数の拡散支配流れに適する。

TVDスキーム(MUSCL、QUICK等)

リミッタ関数により数値振動を抑制しつつ高精度を維持。衝撃波や急勾配の捕捉に有効。

有限体積法 vs 有限要素法

FVM: 保存則を自然に満足。CFDの主流。FEM: 複雑形状・マルチフィジックスに有利。SPH等のメッシュフリー法も発展中。

マトリクスソルバーの選定指針

問題規模と特性に応じた最適なソルバー選択のガイドライン。

ソルバー種別詳細・推奨条件
圧力-速度連成(SIMPLE系)SIMPLE: 標準的だが収束が遅い。SIMPLEC: 圧力補正の緩和が改善。PISO: 非定常問題に適する。
連立系ソルバーAMG(代数的マルチグリッド): 大規模問題の標準。ILU前処理: メモリ効率良好。ブロックGauss-Seidel: 連成系に有効。
DOF別推奨〜10⁵セル: SIMPLE+AMG、10⁵〜10⁷セル: SIMPLEC+AMG+並列、10⁷セル〜: 結合型ソルバー(Coupled Solver)を検討

時間積分法と収束判定

ソルバー内部の制御パラメータと収束判定基準について記述する。

CFL条件(クーラン数)

陽解法: CFL ≤ 1が安定条件。陰解法: CFL > 1でも安定だが、精度と反復回数に影響。LES: CFL ≈ 1を推奨。物理的意味: 1タイムステップで情報が1セル以上進まないこと。

残差モニタリング

連続の式・運動量・エネルギーの各残差が3〜4桁低下で収束と判断。質量保存の残差は特に重要。

緩和係数

圧力: 0.2〜0.3、速度: 0.5〜0.7が一般的な初期値。発散する場合は緩和係数を下げる。収束後は上げて加速。

非定常計算の内部反復

各タイムステップ内で定常解に収束するまで反復。内部反復数: 5〜20回が目安。残差がタイムステップ間で変動する場合は時間刻みを見直す。

数値解法の直感的理解

FVMのイメージ

有限体積法は「会計帳簿」に似ている。各セル(口座)について「入ってくる量」と「出ていく量」の収支を厳密に管理する。隣のセルに流れ出た量は、そのセルに流れ込む量と完全に一致する——これが「保存性」であり、流体解析で質量やエネルギーが勝手に増減しないことを保証する。

SIMPLE法のたとえ

SIMPLE法は「交互に調整する」手法。まず速度を仮に求め(予測ステップ)、その速度で質量保存が満たされるよう圧力を補正し(補正ステップ)、補正された圧力で速度を修正する——このキャッチボールを繰り返して正解に近づく。2人で棚を水平にする作業に似ている:片方が高さを合わせ、もう片方がバランスを取り、これを交互に繰り返す。

風上差分のたとえ

風上差分は「川の流れに立って上流の情報を重視する」手法。川の中にいる人が下流を見ても水の出所は分からない——上流の情報が下流を決めるという物理を反映した離散化手法。精度は1次だが、流れの方向を正しく捕捉するため安定性が高い。

CFDメッシュの品質管理や乱流モデルの選定に悩む時間を、もっと創造的な設計作業に使えたら。 — Project NovaSolverはそんな実務者の声から生まれました。

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