非構造格子 — 数値解法と実装
セル形状の比較
四面体、六面体、プリズム…色々ありますけど、それぞれどう違うんですか?
CFDで使われる主要なセル形状を比較しよう。
| セル形状 | 面数 | 隣接セル数 | 精度 | 自動生成容易さ |
|---|---|---|---|---|
| 四面体(Tet) | 4 | 4 | 低〜中(数値拡散大) | 非常に容易 |
| 六面体(Hex) | 6 | 6 | 高(数値拡散小) | 困難(構造格子必要) |
| 三角柱(Prism) | 5 | 5 | 中〜高 | 境界層で自動生成可 |
| ピラミッド(Pyramid) | 5 | 5 | 中 | hex/tet接続用 |
| ポリヘドラル | 多数 | 多数 | 中〜高 | tetからの変換 |
四面体は数値拡散が大きいってどういうことですか?
四面体は面数が少ないため、セル中心から各面への方向ベクトルの多様性が低い。これにより勾配の近似精度が落ち、斜め方向のフラックス評価で数値拡散が増大する。同じセル数なら六面体の方が2〜3倍精度が高いことが多い。
勾配再構築手法
非構造格子では勾配の計算が特別なんですよね?
その通り。3つの主要な手法がある。
Green-Gauss法
セル面での値 $\phi_f$ から勾配を算出する。面値の評価方法によりcell-based法とnode-based法がある。
最小二乗法(Least-Squares)
近傍セルとの差分から最小二乗の意味で最良の勾配を求める。歪んだメッシュでもロバストだ。
Fluentではどれを使うべきですか?
Fluent Meshing生成のメッシュでは、Green-Gauss Node-BasedまたはLeast-Squaresが推奨される。四面体メッシュではLeast-Squaresの方が安定することが多い。
非直交補正
非直交性ってCFDにどう影響しますか?
有限体積法では拡散項のフラックスを計算する際、セル中心間のベクトル $\mathbf{d}$ と面法線ベクトル $\mathbf{S}$ が平行(直交格子)であれば単純だが、非直交の場合は補正項が必要になる。
第2項が非直交補正項で、これを陽的に扱うと収束性が悪化し、格子の非直交度が70度を超えると発散のリスクが高まる。OpenFOAMでは nonOrthogonalCorrectors パラメータでこの補正の反復回数を設定する。
70度が目安なんですね。
そうだ。一般的なガイドラインとして、非直交度は70度以下、理想は40度以下に抑えたい。特にOpenFOAMのような分離型ソルバーでは非直交性に敏感だ。
レイノルズの実験(1883年)——乱流発見の瞬間
オズボーン・レイノルズは、管内の水にインクを流す実験で「層流から乱流への遷移」を発見しました。流速を上げていくと、インクの線がある瞬間にグチャグチャに乱れる。この劇的な瞬間を、レイノルズは数学的に $Re = \rho uD/\mu$ という無次元数で表現した。100年以上経った今も、CFDエンジニアが最初に確認するのはこのレイノルズ数です。
離散化手法の詳細解説
空間離散化における手法選択が数値精度・安定性・計算コストに与える影響を詳述する。
風上差分(Upwind)
1次風上: 数値拡散が大きいが安定。2次風上: 精度向上するが振動のリスク。高レイノルズ数流れでは必須。
中心差分(Central Differencing)
2次精度だが、Pe数 > 2で数値振動が発生。低レイノルズ数の拡散支配流れに適する。
TVDスキーム(MUSCL、QUICK等)
リミッタ関数により数値振動を抑制しつつ高精度を維持。衝撃波や急勾配の捕捉に有効。
有限体積法 vs 有限要素法
FVM: 保存則を自然に満足。CFDの主流。FEM: 複雑形状・マルチフィジックスに有利。SPH等のメッシュフリー法も発展中。
マトリクスソルバーの選定指針
問題規模と特性に応じた最適なソルバー選択のガイドライン。
| ソルバー種別 | 詳細・推奨条件 |
|---|---|
| 圧力-速度連成(SIMPLE系) | SIMPLE: 標準的だが収束が遅い。SIMPLEC: 圧力補正の緩和が改善。PISO: 非定常問題に適する。 |
| 連立系ソルバー | AMG(代数的マルチグリッド): 大規模問題の標準。ILU前処理: メモリ効率良好。ブロックGauss-Seidel: 連成系に有効。 |
| DOF別推奨 | 〜10⁵セル: SIMPLE+AMG、10⁵〜10⁷セル: SIMPLEC+AMG+並列、10⁷セル〜: 結合型ソルバー(Coupled Solver)を検討 |
時間積分法と収束判定
ソルバー内部の制御パラメータと収束判定基準について記述する。
CFL条件(クーラン数)
陽解法: CFL ≤ 1が安定条件。陰解法: CFL > 1でも安定だが、精度と反復回数に影響。LES: CFL ≈ 1を推奨。物理的意味: 1タイムステップで情報が1セル以上進まないこと。
残差モニタリング
連続の式・運動量・エネルギーの各残差が3〜4桁低下で収束と判断。質量保存の残差は特に重要。
緩和係数
圧力: 0.2〜0.3、速度: 0.5〜0.7が一般的な初期値。発散する場合は緩和係数を下げる。収束後は上げて加速。
非定常計算の内部反復
各タイムステップ内で定常解に収束するまで反復。内部反復数: 5〜20回が目安。残差がタイムステップ間で変動する場合は時間刻みを見直す。
数値解法の直感的理解
FVMのイメージ
有限体積法は「会計帳簿」に似ている。各セル(口座)について「入ってくる量」と「出ていく量」の収支を厳密に管理する。隣のセルに流れ出た量は、そのセルに流れ込む量と完全に一致する——これが「保存性」であり、流体解析で質量やエネルギーが勝手に増減しないことを保証する。
SIMPLE法のたとえ
SIMPLE法は「交互に調整する」手法。まず速度を仮に求め(予測ステップ)、その速度で質量保存が満たされるよう圧力を補正し(補正ステップ)、補正された圧力で速度を修正する——このキャッチボールを繰り返して正解に近づく。2人で棚を水平にする作業に似ている:片方が高さを合わせ、もう片方がバランスを取り、これを交互に繰り返す。
風上差分のたとえ
風上差分は「川の流れに立って上流の情報を重視する」手法。川の中にいる人が下流を見ても水の出所は分からない——上流の情報が下流を決めるという物理を反映した離散化手法。精度は1次だが、流れの方向を正しく捕捉するため安定性が高い。
CFDメッシュの品質管理や乱流モデルの選定に悩む時間を、もっと創造的な設計作業に使えたら。 — Project NovaSolverはそんな実務者の声から生まれました。
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