4節点四面体要素(TET4) — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
tet4-element-theory
理論と物理の世界へ

TET4要素とは

🧑‍🎓

先生、TET4って3次元解析の最も基本的な要素ですか?


🎓

最も基本的ではあるが、実務で使うべきではない要素だ。これを先に言っておく。理由は後で詳しく説明するが、まず理論を理解しよう。


🧑‍🎓

いきなり「使うな」宣言ですか…。


🎓

TET4の理論を学ぶことは重要だ。FEMの基礎を理解するには最適な要素だからね。ただし実務で精度のある結果が欲しいならTET10を使うべきだ。


形状関数

🎓

TET4は4つの節点を持つ四面体で、各節点に3自由度($u, v, w$)。合計12自由度。


形状関数は体積座標(barycentric coordinates)$L_1, L_2, L_3, L_4$ で表される:


$$ N_i = L_i \quad (i = 1, 2, 3, 4) $$

変位の補間:


$$ u(x,y,z) = \sum_{i=1}^{4} N_i u_i = L_1 u_1 + L_2 u_2 + L_3 u_3 + L_4 u_4 $$

🧑‍🎓

形状関数が線形(1次)だから、変位も要素内で線形に変化するんですね。


🎓

そう。変位が線形ということは、ひずみが要素内で一定。これがTET4の致命的な弱点だ。


定ひずみの問題

🧑‍🎓

ひずみが一定だと何が問題なんですか?


🎓

応力が急変する部位(応力集中部、曲げ応力の勾配がある部位)で、応力の変化を全く表現できない


🎓

例えば曲げを受ける梁をTET4でモデル化すると:

  • 理論上は断面の上面が引張、下面が圧縮で線形分布
  • TET4では各要素内が一定応力だから、階段状の粗い近似にしかならない
  • 正確な曲げ応力を出すには極めて細かいメッシュが必要

🧑‍🎓

TET10(二次要素)なら要素内でひずみが線形に変化するから、曲げも表現できる。


🎓

その通り。TET10は10節点で各辺に中間節点を持ち、二次の形状関数を使う。要素内でひずみが線形変化するから、曲げの応力分布を1要素の中で表現できる。


TET4の剛性マトリクス

🎓

TET4の要素剛性マトリクスは12×12で、B行列が定数行列だから数値積分なしに閉じた形で計算できる:


$$ [K_e] = V_e [B]^T [D] [B] $$

$V_e$ は要素体積、$[B]$ はひずみ-変位行列(定数)、$[D]$ は構成則マトリクス。


🧑‍🎓

数値積分が不要なのはメリットですね。


🎓

計算は速い。ただし精度が低いから、結局メッシュを細かくする必要があり、DOF数が増えて計算時間のメリットが相殺される。


定量的な精度比較

🧑‍🎓

TET4とTET10の精度差を数値で示してもらえますか?


🎓

片持ち梁($L/h = 10$)の先端たわみを理論値と比較:


要素タイプメッシュDOFたわみ誤差
TET4粗い(100要素)200-40%(過小)
TET4中程度(1,000要素)1,500-15%
TET4細かい(10,000要素)12,000-5%
TET10粗い(100要素)1,200-2%
TET10中程度(1,000要素)9,000-0.3%
🧑‍🎓

TET4の10,000要素(12,000 DOF)でやっとTET10の100要素(1,200 DOF)と同等…。DOFが10倍必要。


🎓

応力精度ではさらに差が広がる。TET4は応力が要素内一定だから、応力集中のピーク値はメッシュをどんなに細かくしても理論値に近づくのが遅い


TET4を使うべき場面

🧑‍🎓

TET4を使う正当な理由はありますか?


🎓

ほとんどない。強いて言えば:


  • 陽解法(explicit)の衝撃解析 — TET4は質量マトリクスが単純で、陽解法の安定時間増分に有利な場合がある(LS-DYNAの一部ケース)
  • 流体メッシュとの結合 — CFDコードがTET4ベースの場合、構造側もTET4で整合させることがある
  • プリプロセッサの制約 — 一部の古い自動メッシュ生成器がTET4しか出力できない

🎓

ただしいずれも「やむを得ない場合」であり、TET10が使えるなら常にTET10を使うべきだ。


まとめ

🧑‍🎓

TET4の理論を整理します。


🎓

要点:


  • 4節点、線形形状関数、要素内ひずみ一定 — FEMの最も基本的な3D要素
  • 精度が低い — 曲げや応力集中を表現するにはTET10の5〜10倍のDOFが必要
  • 実務では使わない — TET10が代替として常に優れる
  • 理論学習には最適 — FEMの原理を理解するための教科書的な要素
  • 「TET4は使うな」がFEMの鉄則 — これを知っているだけで解析品質が劇的に上がる

🧑‍🎓

「使わない」理由を理解するために学ぶ、というのが面白いですね。


🎓

TET4の限界を知ることはFEMの精度を理解する上で非常に重要だ。なぜTET4がダメなのか説明できるエンジニアは、FEMを正しく使えるエンジニアだ。


Coffee Break よもやま話

タコマナローズ橋の崩壊(1940年)

完成からわずか4ヶ月で崩壊した吊り橋。風速わずか65km/hで起きた空力弾性フラッター(共振)が原因でした。この事故は「振動解析を怠るとどうなるか」の最も有名な教訓として、今でも構造力学の教科書に載っています。現代のCAEは、この種の問題を設計段階で発見できます。もし当時にCAEがあれば、橋は今も架かっていたかもしれません。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。

CAEの未来を、実務者と共に考える

Project NovaSolverは、4節点四面体要素(TET4)における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。

プロジェクトの最新情報を見る →