平面応力問題 — 理論と支配方程式
平面応力とは
先生、「平面応力」って3次元の問題を2次元に落とし込むってことですか?
そう。3次元の弾性体を解くと自由度が膨大になる。しかし薄い板状の構造で面内荷重だけ受ける場合、板厚方向の応力成分がゼロと見なせる。これが平面応力の仮定だ。
どんな構造がこの仮定に当てはまりますか?
板厚が面内寸法に比べて十分薄い構造だ。具体的には:
- 薄板に面内荷重(引張、圧縮、せん断)が作用する場合
- ブラケットや板金部品の解析
- ダムの水圧を受ける薄い壁
逆に平面応力が使えないのは?
板厚方向に拘束がある場合だ。例えばダムの厚い壁や長いトンネルの断面。こういう場合は平面ひずみ(板厚方向のひずみがゼロ)の仮定を使う。平面応力と平面ひずみは似て非なるもので、混同すると大きな誤差になる。
支配方程式
平面応力の支配方程式を教えてください。
2次元の力の平衡方程式:
適合条件(ひずみの適合性):
構成則(フックの法則)はどうなりますか?
平面応力のフックの法則(マトリクス形式):
$E/(1-\nu^2)$ は通常の $E$ より大きいですよね。ポアソン効果で横方向の変形が拘束されるから、実効的な剛性が上がる。
いい指摘だ。ただし平面応力では横方向($z$ 方向)の変形は自由だ。$E/(1-\nu^2)$ が現れるのは、2成分の応力が連成するからで、3次元の $E$ とは意味が少し違う。
重要なポイント:平面応力では $\sigma_{zz} = 0$ だが、$\varepsilon_{zz} \neq 0$ だ:
板厚方向にひずみが生じる。板が面内に引張られると薄くなる — これがポアソン効果だ。
平面応力 vs. 平面ひずみ
平面ひずみとの違いをもう少し詳しく教えてください。
平面ひずみの実効剛性は平面応力より大きい…つまり同じ荷重で変形が小さくなる。
そう。$z$ 方向の変形が完全に拘束されるから、3次元的な拘束効果で剛性が上がる。この差は $\nu = 0.3$ で約10%。小さいように見えるが、応力の評価では無視できない差だ。
Airyの応力関数
平面問題には「応力関数」を使う解法があると聞きました。
Airyの応力関数 $\phi(x,y)$ を使うと、平衡方程式と適合条件を1つの方程式にまとめられる:
このバイハーモニック方程式を解けば、応力成分は:
応力が自動的に平衡を満たすんですね。便利!
古典的な弾性論の問題(穴のある無限板、くさび、半平面の接触問題)はAiry関数で解ける。Kirsch問題(無限板の円孔周りの応力集中)も Airy関数の解だ。FEMの検証問題として非常に有用だよ。
まとめ
平面応力の理論を整理します。
要点:
- $\sigma_{zz} = 0$ の仮定 — 薄板の面内問題に適用
- 平面ひずみとの区別が重要 — 仮定を間違えると10%以上の誤差
- 構成則は $E/(1-\nu^2)$ を含む — 2次元連成効果
- $\varepsilon_{zz} \neq 0$ — 板厚方向のひずみは存在する
- Airy関数で古典問題が解ける — FEMの検証に有用
3次元問題を2次元に「正しく」落とし込むには、物理の理解が不可欠ですね。
その通り。2次元要素は計算コストを劇的に削減できるが、仮定が成り立つ場面を正しく見極めることが前提だ。疑わしければ3次元で解いて2次元の結果と比較すればいい。
タイタニック号と安全率の教訓
「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。
各項の物理的意味
- 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
- 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
- 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
- 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 変位 $u$ | m(メートル) | mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること |
| 応力 $\sigma$ | Pa(パスカル)= N/m² | MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意 |
| 歪み $\varepsilon$ | 無次元(m/m) | 工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時) |
| 弾性率 $E$ | Pa | 鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意 |
| 密度 $\rho$ | kg/m³ | mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼) |
| 力 $F$ | N(ニュートン) | mm系ではN、m系ではNで統一 |
数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)
最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)
メッシュ密度を変えた収束性の確認:
ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。
構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。
CAEの未来を、実務者と共に考える
Project NovaSolverは、平面応力問題における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。
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