防振設計と伝達率 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

防振(振動絶縁)とは

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先生、「防振」って振動を止めることですか?


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振動を「止める」のではなく伝達を減らすことだ。振動源と被振動体の間にばね(防振ゴム、防振マウント)を挟んで、振動の伝達を抑制する。


伝達率

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伝達率(transmissibility)$T$ は入力に対する出力の比:


$$ T(\omega) = \frac{|X_{out}|}{|X_{in}|} = \sqrt{\frac{1 + (2\zeta r)^2}{(1-r^2)^2 + (2\zeta r)^2}} $$

ここで $r = \omega / \omega_n$(振動数比)、$\zeta$ は減衰比。


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$r = 1$(共振)で伝達率がピーク、$r > \sqrt{2}$ で $T < 1$(防振効果)ですよね。


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完璧だ。$r > \sqrt{2}$(つまり $f > \sqrt{2} f_n$)の領域が防振領域。ここでは入力より出力が小さくなる。


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設計のポイント:

  • $f_n$ を低くする — 防振領域が広がる。マウントを柔らかく
  • ただし柔らかすぎると静たわみが大きい — 実用的な制約
  • 共振を通過する運転がある場合、減衰が必要 — $\zeta$ でピークを抑制

防振マウントの選定

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マウントばね定数減衰用途
ゴムマウント中($\zeta$ 5〜15%)エンジンマウント、機器マウント
コイルスプリング低($\zeta$ < 1%)精密機器防振
エアスプリング非常に低半導体製造装置
鋼線マウント中(摩擦減衰)軍用機器
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精密機器にはエアスプリング…$f_n$ を0.5 Hz程度まで下げられるんですね。


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エアスプリングは$f_n = 0.5 \sim 2$ Hz。ほぼ全ての外部振動を遮断できる。半導体の露光装置やレーザー装置ではエアスプリングが標準。


FEMでの防振設計

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FEMでの防振設計:


1. 機器+マウント+基礎のFEMモデルを構築

2. マウントをばね要素(+ダンパー)でモデル化

3. 基礎に入力振動を与える(周波数応答 or 時刻歴)

4. 機器の応答(変位、加速度)を計算

5. 伝達率 $T = |X_{out}| / |X_{in}|$ をプロット

6. $T < T_{target}$ を確認


まとめ

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防振設計と伝達率を整理します。


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要点:


  • 伝達率 $T$ が設計の中心指標 — $T < 1$ が防振効果あり
  • $f > \sqrt{2} f_n$ で防振領域 — $f_n$ を低くするほど効果大
  • 共振ピークは減衰で抑制 — $\zeta$ の適切な設定
  • マウントの選定 — ゴム、コイル、エア、鋼線
  • FEMで伝達率を計算 — ばね要素+周波数応答解析

Coffee Break よもやま話

タイタニック号と安全率の教訓

「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。

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Project NovaSolverは、防振設計と伝達率における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。

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