モード法周波数応答解析 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

周波数応答解析とは

🧑‍🎓

先生、「周波数応答解析」って何ですか?


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調和的(正弦波的)な外力に対する構造の定常応答を求める解析だ。外力の振動数を変化させて、各振動数での変位・加速度・応力を計算する。


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入力: $\{F\} e^{i\omega t}$(振動数 $\omega$ の調和力)

出力: $\{u\} e^{i\omega t}$(同じ振動数の定常応答)


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共振のピークがどこにあるか、どの程度の振幅になるかがわかるんですね。


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その通り。FRF(周波数応答関数) $H(\omega) = u / F$ のグラフが主な結果。共振ピーク、反共振谷、位相の変化が全て見える。


モード法 vs. 直接法

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周波数応答解析には2つの手法がある:


手法原理利点欠点
モード法固有モードに展開してモード座標で解く高速。多数の周波数点を効率的に計算モード数の不足で精度低下の可能性
直接法各振動数で連立方程式を直接解く精度が高い。モード数に依存しない計算コスト大。周波数点ごとに解く
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モード法は固有振動数解析の結果を利用するんですね。


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そう。まず固有値解析で $N$ 個のモードを求め、運動方程式をモード座標 $\{q\}$ に変換:


$$ \ddot{q}_i + 2\zeta_i \omega_i \dot{q}_i + \omega_i^2 q_i = \{\phi_i\}^T \{F\} e^{i\omega t} $$

各モードの応答は独立に解ける(モード直交性のおかげ)。$N$ 個の1自由度系を解くだけ。


モード重畳の結果

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モード座標の定常応答:


$$ q_i(\omega) = \frac{\{\phi_i\}^T \{F\}}{\omega_i^2 - \omega^2 + 2i\zeta_i \omega_i \omega} $$

物理座標の応答:


$$ \{u(\omega)\} = \sum_{i=1}^{N} q_i(\omega) \{\phi_i\} $$

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分母に $\omega_i^2 - \omega^2$ がある…$\omega = \omega_i$ で分母がゼロに近づいて共振。


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まさにそう。減衰項 $2i\zeta_i \omega_i \omega$ が共振での振幅を有限に保つ。$\zeta = 0$(減衰なし)では共振で振幅が無限大。


ソルバー設定

Nastran

```

SOL 111 $ モード法周波数応答

CEND

METHOD = 10

FREQUENCY = 20

BEGIN BULK

EIGRL, 10, , , 50

FREQ1, 20, 1., 500., 1. $ 1〜500 Hz, 1 Hz刻み

```

Abaqus

```

*STEP

*FREQUENCY

50, ,

*END STEP

*STEP

*STEADY STATE DYNAMICS, DIRECT=NO

1., 500., 500, 1.

*END STEP

```

Ansys

```

/SOLU

ANTYPE, HARMONIC

HROPT, MSUP ! モード重畳法

HARFRQ, 1., 500.

NSUBST, 500

SOLVE

```

まとめ

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モード法周波数応答を整理します。


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要点:


  • 調和外力に対する定常応答 — FRF(周波数応答関数)が主な結果
  • モード法 — 固有モードに展開して効率的に計算
  • 共振ピークは $\omega = \omega_i$ で発生 — 振幅は $1/(2\zeta)$ に比例
  • SOL 111(Nastran), *SSD(Abaqus), HARMONIC MSUP(Ansys)
  • モード数が精度を左右 — 有効質量90%がカバーされるモード数が必要

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固有振動数解析→周波数応答解析の2段階ワークフローですね。


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固有振動数解析が「構造の固有特性」を明らかにし、周波数応答解析が「外力に対する応答」を予測する。この2つのセットが動的解析の基本フローだ。


Coffee Break よもやま話

NASAとNASTRAN — FEMの夜明け

今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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